奈良美智の日々

Ceramic Review

イギリスの雑誌『Ceramic Review』誌からの質問と僕の答えを抜粋。


1) When did you start working with ceramics and why? What interested you about the medium?
1)いつ頃からセラミックで制作を始められたのですが?また、その理由もお伺いできればと思います。
2) When did you start working at Shigaraki Ceramic Cultural Park? Please tell us about the experience working there.
2)いつから陶芸の森で制作をされるようになったのでしょうか? レジデンス・アーティスト
としてそこでの生活や経験など教えて頂けますか。


僕が初めて『陶芸』というか、粘土で作ったものを焼成して作品化したのは2007年の夏で、場所は陶芸の森でした。実は、その以前から陶芸の森でのレジデンス・アーティストのオファーを受けていましたが、それまでアーティスト・イン・レジデンスのようなプログラムに参加したことがなく、しかも絵画が専門の自分にとって『陶芸』というものはピンとこなかったので、お断りの返事をしていました。しかし、2006年秋から翌年の春まで、金沢21世紀美術館で個展をした際に、滞在制作を始めて経験したのですが、とても新鮮で楽しかったのです。現地で出会ったボランティアたちと大きな犬のぬいぐるみを作ったり、一緒に晩御飯を食べて語り合ったり、ライブを企画したりと、絵を描く以外のことが自分を少し成長させてくれた気がしました。そういうわけで、陶芸の森からのオファーを受けることにしたのは、「陶芸がしたい!」というよりは、いつも制作している場所ではないところに行き、そこで出会う人々を触媒として自分がもっと成長できるのでは、という期待と、絵を描く以外の自分の未知な部分を知りたかったのです。

実際、陶芸の森での滞在は新しい自分を発見させてくれたし、今まで一人で制作してきた自分に人と関わることの楽しさ、素晴らしさをおしえてくれました。自分よりも若い作家、年上の作家、日本だけだはなく色々な国から来ている作家たち。日中は、それぞれがそれぞれのペースで制作に没頭するのだけれど、夜はみんなでわいわい言いながら、一緒に料理をして食べる。飲んで語り合ったり、スタジオに戻って夜中まで制作を続けたり、窯の様子を見に行ったり・・・。各自の制作方法も様々で、ロクロを使って器類を作る人に、具象的な彫刻を作る人、『物質としての土を焼くという行為自体』に意味を求める人と多種多様で、初心者ながらも彫刻作品を作ってもいた自分が、その場に入っていくことに不安はありませんでした。なによりみんな親切で、彼らから陶芸の歴史や、ロクロの使い方などおしえてもらいました。ロクロを使って制作する気はなかったのですが、少しでも出来るようになるとやっぱり楽しくて、普段使いの器も作ってしまいました。


3) Do you now have a wheel and kiln in your studio? Where is your studio?
3)奈良さんのアトリエには、轆轤や窯はあるのでしょうか? アトリエはどちらですか?

僕のスタジオは東京から北へ200kmほど離れた高原地帯にあります。ご近所が3軒の田舎で、ロクロも窯もありません。僕は普段の制作ではアシスタントを使わないので、そこでは絵画制作が主です。

4) Do you have any favourite modern ceramic artists, or older ceramics from history. If so, what examples and why?
4)奈良さんのお好きな近代の陶芸家、または陶芸の歴史の中で特に好きな作品はありますか?
もしある場合、その理由についても教えて下さい。

陶芸を学ぶ以前から、李朝の欲のない素朴な表現に惹かれていました。あまり釉薬や技術には興味がないようで、白黒写真でみても鑑賞できるような造形的なものに惹かれます。あるいは、作り手の精神が技術を越えて鑑賞者に伝わるようなものが好きです。また、近代北欧の器や、日本でも一般的にポピュラーなルーシー・リーの作品も好きです。

5) Some of your ceramic works are functional – they could be vases for flowers or plates for food. Do you like seeing your characters have this functional role?
5)奈良さんのセラミック作品の中には、花瓶や壷、食器といった普段使いの物もありますよね。ご自身のキャラクター達が実用的な器になることについては、どう思われますか?

僕が作った普段使いの陶器は、基本的にNot for saleでほとんど友人にプレゼントするためのものです。知らない人の手に渡ることを考えて作ってはいません。また、実用品として知らない人の手に渡せるほど僕のロクロ技術は高くはありません。


7) Your work ‘Fire Mountain’ (2010), for example, is not painted or glazed. Did you want to emphasise the raw, clay texture? What do you like about this texture?
7)例えば、2010年の「Fire Mountain」という作品は、素焼きのまま(焼締め)の状態です。これは、土の持つ質感をそのまま強調しようとした結果なのでしょうか? また、このようなテクスチャーがお好きなのは何故ですか?

その上に釉薬をかけて焼いても焼かなくても、素焼きの時点でスピリットがちゃんと伝わる状態だったからです。僕にとっての完成はそういうことです。

8) Your large ceramic sculptures look like ‘Haniwa’ from Shinto tombs, or ‘Komainu’ in later periods. Did you intend this connection, and why?
8)奈良さんの大きなセラミック作品は、古墳時代の埴輪や、その後の時代の狛犬を彷彿させます。この関係性は意図的なものなのでしょうか、またそれは何故ですか?

たぶん、現代的なテクニックではなく、なにか根源的なものを重視していた結果ではないかと思います。単純で力強い造形に興味があり、釉薬やへら等の道具にはあまり興味がありません。僕の場合、道具を使いすぎると表面的になってしまうので、素手で土と取っ組み合いをしながら作りたいと思っています。

10) When and where are your ceramics going to be exhibited in 2011? Any plans to show them in England?
10)2011年にセラミック作品を展示する予定がありましたら、その展示の時期と場所が知りたいです。イギリスでセラミック作品を展示する予定はあるのでしょうか?

これからもセラミック作品は制作していきますが、1メートルを越える大きなものも多く、時には2メートルも越えてしまい、梱包はもとより運搬や設置が非常に大変なため海外でも展示は予定していません。そのようなことをサポートしてもらえる美術館などからのオファーがあれば喜んでイギリスで展覧会をしたいです。小品だけでの展示は僕の本意ではないので、大小の作品を同時に見せたり、絵やドローイングも交えた展示をしてみたいです。
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by ynfoil | 2011-03-05 17:34 | art | Comments(0)